ちょっと役立つ熱処理の知識
第5回 鋼の隠し味
前回、鋼には炭素(C)が入っているというお話をしました。実を言うと私たちが普通目にする鉄材には、このほかにもさまざまな元素が僅かずつ含まれています。ケイ素(Si)、マンガン(Mn)、リン(P)、硫黄(S)などなど。これらを「鋼の5元素」などと呼んだりします。
例えばマンガンは、焼きが良く入るようになり、鋼に強靭性を与える働きがありますし、リンや硫黄は鋼をもろくする性質があります。ケイ素は、炭素ほどではありませんが、鋼の強さや硬さを増す性質を持っています。そうしたわけで、鋼の性質を調べるためには、まずこの5元素の含有量を確かめるわけです。
また鋼の中には、これ以外にも、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、チタン(Ti)などといった元素を加えて、特別な性質を持たせているものもあります。特殊鋼とよばれるこれらの鋼は、工具やバネ、耐熱用などさまざまな用途に使われています。産業技術が発達するにつれて、ますます高度な機能や性質を持つ材料が求められています。より摩耗に強いもの、より粘りがあるもの、より熱に強いもの、あるいはそれらの性質を重ね合わせたものなど。それに応じて鋼はつくられており、熱処理技術によってさらに性質を高めていくのです。
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